花子くん 寧々ちゃん キス。 花子くんのキスシーンはアニメ第4話!寧々からのキスも?キスシーン他まとめ

#地縛少年花子くん #花ヤシ 紐か、縄か。

花子くん 寧々ちゃん キス

「…あのぅ、花子くん…?」 「なぁに?ヤシロ」 いつもの、無邪気な笑顔。 でも、その裏に隠れたものに思わず飲み込んでしまいそうになる質問を、必死に口から搾り出す。 「こ、これはなんなのでしょう…」 「紐」 いや紐、じゃなくて。 当然のように応える花子くんに、ぱくぱくと声にならない言葉を発する。 「どうしたのヤシロ?魚みたいに…あ、エラ呼吸が恋しいなら水持ってくるよ?」 「そんなわけないでしょ!!なんで拘束されてるのかって聞いてるのよ!」 そう、今私には、紐だか縄だかわかんないものが巻きついてる。 手首と足が縛られてて、身動きが取れない。 いつも私が綺麗に掃除してるしほとんど誰も使わないからいいけど、ここは仮にもトイレの床だよ花子くん。 キッと睨むと、どこか不機嫌な雰囲気をまとった花子くんの瞳が、私を捉える。 口元は意地悪く口角が上がっているのに、目は笑っていない。 「なんで、かぁ…自分の胸に聞いてみてよ、ヤ・シ・ロ・さん?」 いつもより低い、苛立ちを堪えるような声。 花子くんはそう言って私の額をつつくと、もっけに見張りを頼んでどこかへ消えてしまった。 呆然と、花子くんの消えた場所を見つめていたけど、すぐにはっとして、花札を始めたもっけたちに助けを求める。 「もっけちゃん助けて!この縄、解いて!」 言うとすぐに、「できぬ」と返ってくる。 どうしてかと問えば、「飴」「もらった」「等価交換」と言われた。 もっけの耳にはしっかりと、ぶどう味やいちご味の飴玉が握られている。 なんということだ、花子くんはこの子たちを買収したのか。 …それならば。 「もっけちゃん!この縄解いてくれたら飴あげる!飴玉じゃなくて、棒つきキャンディ!」 キランッと、もっけたちの目が光った気がした。 「…とれない?」 手首に集中するもっけたちに聞くと、戻ってくるのは「すまぬ」「無理だ」「とれぬ」という無慈悲な言葉たち。 怪異が使っている紐だからだろうか。 特殊なものらしく、いくら解こうにも輪ゴムのように縛りつく。 私ははぁ…と息をついて、もっけたちに笑顔を向けた。 「ごめんね、ありがとう。 「は、花子くん!?」 「もっけお疲れ様ー。 はい飴。 見張りありがとー」 驚く私をスルーして、花子くんはもっけに飴を渡す。 追加報酬をもらったもっけたちは大喜びで、ぴょんぴょんと自分たちのテリトリーへと帰っていった。 夕暮れのトイレに、気まずい空気が流れる。 私の視線の先には花子くんがいるけど、もっけたちが出て行った扉のほうを向いたまま、振り向かない。 なんだかその背を見たくなくて、私は視線をそらす。 それでも行き場がなくて、結局トイレの床を見つめる。 「…ヤシロ」 「え?」 ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、鼻と鼻がくっつくくらいの距離に花子くんの顔があった。 短い悲鳴をあげると、そのポーカーフェイスが少し崩れる。 私が後ずさってトイレの壁にもたれかかると、花子くんは不機嫌そうに私の顔の横に両手を叩きつけた。 ダンッという音が耳元で鳴り、思わずぎゅっと目を瞑る。 次はなにがくるのかと身構えたけど、いつまでたってもなにもない。 状況を確認したくて、私は薄く目を開けた。 「…花子、くん?」 目に飛び込んできたのは、切なそうな、悔しそうな、そんな花子くんの顔。 目を逸らせなくて、だけど、声も出なくて。 硬直してしまった私に、花子くんが詰め寄る。 「ねェヤシロ?俺が顔近づけたら、嫌なの?……アイツとも同じくらいの距離で話してたのに」 「あ、あいつ…?」 「とぼけないでよ、ヤシロ」 ぐっと、さらに距離を詰めてくる。 あと少しで、唇がくっつきそうなくらいの距離。 お互いの吐息がかかって、間近でかち合った瞳を逸らすことは許されない。 「ほ、本当にわからないのっ!!とぼけてるわけじゃないのよ…っ」 「ふぅん…いいよ、教えてあげる。 今日の昼休み、見慣れない男とこのくらいの距離で話してたでしょ?」 「え…?」 「見てないとでも、思ってたの?」 花子くんの目が、私を見つめる。 何も言えないでいると、ふっと唇に、何かが、触れた。 それは冷たくて、やわらかくて、優しくて。 なのに、触れたところは熱くなって。 唇を合わせただけの、幼稚園児がおままごとでするようなキス。 だけど、そんな簡単なものでも、私の頭を真っ白にするには十分なもので。 ゆっくりと、唇が離されていって、ひんやりとした感触がなくなって、残った熱だけが体を、顔を熱くする。 「…こんなことができる距離で話してたんだけど、まだわかんない?」 「あ、の、花子くん、それは…」 「言い訳は、聞きたくないから」 「んっ!?」 真実を告げようとした口は、花子くんのでふさがれる。 しかも、さっきよりもはるかに深く。 手も、足も動かない。 紐は未だに外れない。 なんとか抵抗しようとするけど、体の力が抜けて、なにもできない。 空気を求めて口を開けたら、そこからぬるりとしたものが腔内に入ってきた。 それは私の舌先をつついて、誘い出すように絡める。 背中をゾクゾクしたものが駆け抜け、体を小さく振るわせた。 腔内を撫ぜられ、飲みきれなくなった唾液が口元を伝い、自然に出た涙が頬を濡らす。 「ふ、ぅ、っは…っぁ、苦し…っ」 息継ぎができなかった私の、ほんの小さな呟き。 それを聞いたのか、たまたまなのか、花子くんの唇が、私から離れていく。 最後に名残惜しそうに唇を舐めて、顔を離した。 銀色の糸が照明に反射して、キラキラと光る。 お互いの息が、荒い。 すぅっと、花子くんの手が伸びてきて、私の頬に触れた。 その手は目元の涙を拭って、私を強く抱きしめた。 「は、なこく…っ?」 「……ゴメン。 俺が勝手に だけだから」 「え…な、なんて…?」 ぎゅうっと、私を抱きしめる腕に力が入った。 「俺が勝手に、嫉妬しただけだから」 「嫉妬って…」 「ヤシロが…男と楽しそうに話してるの、見たことなかったから…」 そう言って、花子くんはもう一度、「ごめん」と謝った。 私は密着した体を優しく離す。 目線をそらす花子くんの顔に向かって、こう言った。 「あの、私が話してた人は…女の子、だよ?」 「…え?」 ぽかんとした花子くんが、私を見つめる。 「え、え?でも、だって、男子の制服着て…?」 「今朝、雨だったでしょ?それで、濡れちゃったらしくて…保健室の予備が男子の制服しかなくて。 それで…」 「あ、え、じゃあ、俺は、勘違いして…っ!?」 「うん…さっき言おうとしたんだけど、その…口、塞がれちゃったから…」 「っ、~~~~っっっ!?」 ぼんっと、花子くんの顔から火が出る。 わなわなと口が動いて、顔どころか耳までもが赤く染まっていく。 目は泳ぎまくっていて、花子くんはふらりと一歩後ずさった。 「あ、あの…」 「ややややヤシロごめん!!俺、すごい勘違いして、ヤシロにあんな…っ!?」 「は、花子くん、落ち着いて…!」 なだめても、なだめても、花子くんは身もだえ続ける。 口元を手で隠して、私に顔を見られないようにした花子くんは、恥ずかしさで震えている。 「花子くん、あの…ヤキモチやいた理由教えてもらっても」 「っ!!や、ヤシロ!今日はもう帰っていいよっ!じゃあまた明日ね!!」 「えっ?あ、え!?」 カバンを持たされ追い出され、大きな音を立ててトイレの扉が閉じられる。 「理由、明日教えてくれるかな」 いまだ熱を持つ唇に触れながら、私はそっと呟いた。 「っぅあああああああああ、なんであんなことやったんだよ俺の馬鹿……」 ヤシロのいなくなった女子トイレで、俺は一人・・・発狂していた。 「あーっ、恥ずい…ヤシロに嫌われたかな…ていうか理由聞かれたらなんて答えれば…」 ううう、と空中で身を捩る。 もう自分の気持ちがわからない。 嫉妬、ってヤシロには言ったけど、なんで嫉妬したのかは俺にもいまいちわかっていない。 …いや、自分の気持ちに向き合ってないだけなのだろうか。 「明日、逃げないで会えるといいけど…自信、ないな」 ついたため息と言の葉は、誰もいなくなったトイレにいつまでも反響していた。

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【地縛少年花子くん】花子くん(あまね)がかっこいい・かわいい!ヤシロとの恋愛・キスシーンやつかさとの関係は?

花子くん 寧々ちゃん キス

「…あのぅ、花子くん…?」 「なぁに?ヤシロ」 いつもの、無邪気な笑顔。 でも、その裏に隠れたものに思わず飲み込んでしまいそうになる質問を、必死に口から搾り出す。 「こ、これはなんなのでしょう…」 「紐」 いや紐、じゃなくて。 当然のように応える花子くんに、ぱくぱくと声にならない言葉を発する。 「どうしたのヤシロ?魚みたいに…あ、エラ呼吸が恋しいなら水持ってくるよ?」 「そんなわけないでしょ!!なんで拘束されてるのかって聞いてるのよ!」 そう、今私には、紐だか縄だかわかんないものが巻きついてる。 手首と足が縛られてて、身動きが取れない。 いつも私が綺麗に掃除してるしほとんど誰も使わないからいいけど、ここは仮にもトイレの床だよ花子くん。 キッと睨むと、どこか不機嫌な雰囲気をまとった花子くんの瞳が、私を捉える。 口元は意地悪く口角が上がっているのに、目は笑っていない。 「なんで、かぁ…自分の胸に聞いてみてよ、ヤ・シ・ロ・さん?」 いつもより低い、苛立ちを堪えるような声。 花子くんはそう言って私の額をつつくと、もっけに見張りを頼んでどこかへ消えてしまった。 呆然と、花子くんの消えた場所を見つめていたけど、すぐにはっとして、花札を始めたもっけたちに助けを求める。 「もっけちゃん助けて!この縄、解いて!」 言うとすぐに、「できぬ」と返ってくる。 どうしてかと問えば、「飴」「もらった」「等価交換」と言われた。 もっけの耳にはしっかりと、ぶどう味やいちご味の飴玉が握られている。 なんということだ、花子くんはこの子たちを買収したのか。 …それならば。 「もっけちゃん!この縄解いてくれたら飴あげる!飴玉じゃなくて、棒つきキャンディ!」 キランッと、もっけたちの目が光った気がした。 「…とれない?」 手首に集中するもっけたちに聞くと、戻ってくるのは「すまぬ」「無理だ」「とれぬ」という無慈悲な言葉たち。 怪異が使っている紐だからだろうか。 特殊なものらしく、いくら解こうにも輪ゴムのように縛りつく。 私ははぁ…と息をついて、もっけたちに笑顔を向けた。 「ごめんね、ありがとう。 「は、花子くん!?」 「もっけお疲れ様ー。 はい飴。 見張りありがとー」 驚く私をスルーして、花子くんはもっけに飴を渡す。 追加報酬をもらったもっけたちは大喜びで、ぴょんぴょんと自分たちのテリトリーへと帰っていった。 夕暮れのトイレに、気まずい空気が流れる。 私の視線の先には花子くんがいるけど、もっけたちが出て行った扉のほうを向いたまま、振り向かない。 なんだかその背を見たくなくて、私は視線をそらす。 それでも行き場がなくて、結局トイレの床を見つめる。 「…ヤシロ」 「え?」 ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、鼻と鼻がくっつくくらいの距離に花子くんの顔があった。 短い悲鳴をあげると、そのポーカーフェイスが少し崩れる。 私が後ずさってトイレの壁にもたれかかると、花子くんは不機嫌そうに私の顔の横に両手を叩きつけた。 ダンッという音が耳元で鳴り、思わずぎゅっと目を瞑る。 次はなにがくるのかと身構えたけど、いつまでたってもなにもない。 状況を確認したくて、私は薄く目を開けた。 「…花子、くん?」 目に飛び込んできたのは、切なそうな、悔しそうな、そんな花子くんの顔。 目を逸らせなくて、だけど、声も出なくて。 硬直してしまった私に、花子くんが詰め寄る。 「ねェヤシロ?俺が顔近づけたら、嫌なの?……アイツとも同じくらいの距離で話してたのに」 「あ、あいつ…?」 「とぼけないでよ、ヤシロ」 ぐっと、さらに距離を詰めてくる。 あと少しで、唇がくっつきそうなくらいの距離。 お互いの吐息がかかって、間近でかち合った瞳を逸らすことは許されない。 「ほ、本当にわからないのっ!!とぼけてるわけじゃないのよ…っ」 「ふぅん…いいよ、教えてあげる。 今日の昼休み、見慣れない男とこのくらいの距離で話してたでしょ?」 「え…?」 「見てないとでも、思ってたの?」 花子くんの目が、私を見つめる。 何も言えないでいると、ふっと唇に、何かが、触れた。 それは冷たくて、やわらかくて、優しくて。 なのに、触れたところは熱くなって。 唇を合わせただけの、幼稚園児がおままごとでするようなキス。 だけど、そんな簡単なものでも、私の頭を真っ白にするには十分なもので。 ゆっくりと、唇が離されていって、ひんやりとした感触がなくなって、残った熱だけが体を、顔を熱くする。 「…こんなことができる距離で話してたんだけど、まだわかんない?」 「あ、の、花子くん、それは…」 「言い訳は、聞きたくないから」 「んっ!?」 真実を告げようとした口は、花子くんのでふさがれる。 しかも、さっきよりもはるかに深く。 手も、足も動かない。 紐は未だに外れない。 なんとか抵抗しようとするけど、体の力が抜けて、なにもできない。 空気を求めて口を開けたら、そこからぬるりとしたものが腔内に入ってきた。 それは私の舌先をつついて、誘い出すように絡める。 背中をゾクゾクしたものが駆け抜け、体を小さく振るわせた。 腔内を撫ぜられ、飲みきれなくなった唾液が口元を伝い、自然に出た涙が頬を濡らす。 「ふ、ぅ、っは…っぁ、苦し…っ」 息継ぎができなかった私の、ほんの小さな呟き。 それを聞いたのか、たまたまなのか、花子くんの唇が、私から離れていく。 最後に名残惜しそうに唇を舐めて、顔を離した。 銀色の糸が照明に反射して、キラキラと光る。 お互いの息が、荒い。 すぅっと、花子くんの手が伸びてきて、私の頬に触れた。 その手は目元の涙を拭って、私を強く抱きしめた。 「は、なこく…っ?」 「……ゴメン。 俺が勝手に だけだから」 「え…な、なんて…?」 ぎゅうっと、私を抱きしめる腕に力が入った。 「俺が勝手に、嫉妬しただけだから」 「嫉妬って…」 「ヤシロが…男と楽しそうに話してるの、見たことなかったから…」 そう言って、花子くんはもう一度、「ごめん」と謝った。 私は密着した体を優しく離す。 目線をそらす花子くんの顔に向かって、こう言った。 「あの、私が話してた人は…女の子、だよ?」 「…え?」 ぽかんとした花子くんが、私を見つめる。 「え、え?でも、だって、男子の制服着て…?」 「今朝、雨だったでしょ?それで、濡れちゃったらしくて…保健室の予備が男子の制服しかなくて。 それで…」 「あ、え、じゃあ、俺は、勘違いして…っ!?」 「うん…さっき言おうとしたんだけど、その…口、塞がれちゃったから…」 「っ、~~~~っっっ!?」 ぼんっと、花子くんの顔から火が出る。 わなわなと口が動いて、顔どころか耳までもが赤く染まっていく。 目は泳ぎまくっていて、花子くんはふらりと一歩後ずさった。 「あ、あの…」 「ややややヤシロごめん!!俺、すごい勘違いして、ヤシロにあんな…っ!?」 「は、花子くん、落ち着いて…!」 なだめても、なだめても、花子くんは身もだえ続ける。 口元を手で隠して、私に顔を見られないようにした花子くんは、恥ずかしさで震えている。 「花子くん、あの…ヤキモチやいた理由教えてもらっても」 「っ!!や、ヤシロ!今日はもう帰っていいよっ!じゃあまた明日ね!!」 「えっ?あ、え!?」 カバンを持たされ追い出され、大きな音を立ててトイレの扉が閉じられる。 「理由、明日教えてくれるかな」 いまだ熱を持つ唇に触れながら、私はそっと呟いた。 「っぅあああああああああ、なんであんなことやったんだよ俺の馬鹿……」 ヤシロのいなくなった女子トイレで、俺は一人・・・発狂していた。 「あーっ、恥ずい…ヤシロに嫌われたかな…ていうか理由聞かれたらなんて答えれば…」 ううう、と空中で身を捩る。 もう自分の気持ちがわからない。 嫉妬、ってヤシロには言ったけど、なんで嫉妬したのかは俺にもいまいちわかっていない。 …いや、自分の気持ちに向き合ってないだけなのだろうか。 「明日、逃げないで会えるといいけど…自信、ないな」 ついたため息と言の葉は、誰もいなくなったトイレにいつまでも反響していた。

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【あらすじ】『地縛少年花子くん』8話(2巻)【感想】

花子くん 寧々ちゃん キス

『好きだった…ずっと』 直人がそっと呟き、美奈子の頬を優しく撫でるように触れる。 美奈子は頬を染め、そっと目を閉じ、それを合図のように直人は美奈子の唇に近づく。 そして二人の影は一つに………… 「はぁ〜〜〜〜素敵っ!!」 そこまで読んだところで、寧々は感嘆の吐息を吐いた。 寧々が片手に持っている小説。 それは最近女子の間で人気の恋愛小説だ。 近々映像化もされる人気作品のようで、親友の葵からもオススメされて貸してもらったものだった。 因みに今は放課後。 いつもより早く学校の授業が終わったため、寧々は何時ものトイレ掃除の時間まで一人で教室で読んでいたのだ。 「美奈子と直人がすれ違いになった時はヒヤヒヤしたけど、最終的には想いが通じ合って良かった〜〜〜〜」 誰も聞いていないことをいいことに寧々は誰もいない教室で小説の感想をペラペラと話す。 「やっぱり想いが通じ合った後はキスよね……」 先程のページを読み返し、寧々は目をキラキラと輝かせてウットリとする。 「夕焼け色の教室で、好きな男の子とキス……なんてロマンチック…!」 はぁ、とまた寧々は吐息を吐き、いつもように妄想の世界へと想いを馳せる。 寧々と、もう一人の人物。 『好きだった…ずっと…』 そう頬を染めながら言う。 ちょ、ちょっと待って!!なんでそこで出てくるのが花子くんなの!!私の好きなタイプは源先輩みたいな王子様タイプで花子くんは全然好みじゃないのに!! やだやだ!と寧々は自分の妄想に慌てて否定して、首を振る。 すると不意に目に付いた時計の針がもうだいぶ進んでいることに気付いた。 「た、大変!花子くんのトイレ掃除の時間過ぎてる!!」 寧々は慌てて持っていた小説をカバンの中に入れ、支度を整える。 そしてさぁ、行こう…と後ろを振り返ろうとした時。 「ヤーシロっ」 不意に後ろから声が聞こえ、ビクッと肩をあげる。 その声は妄想の中で聞いた声と似ている。 振り返った先…その声の持ち主の先に目を向ける。 するとそこにいたのは、黒い学生服を身に纏った花子くん……ではない。 「あ、貴方は………」 「アハっ、普だと思った?」 そう、そこにいたのは…花子くんの双子、つかさだった。 つかさは楽しげに「普みたいに呼んでみたんだけど、似てた?」とケタケタと笑う。 だがそんなつかさとは真逆に、寧々はその姿に、すかさず持っていた鞄を盾のように前にやり、身体を強張らせ、身構える。 それもそのはず。 このつかさという花子くんに似た男の子に、寧々は以前誘拐されたあげく、消されそうになったし、実際暴力を振るわれそうになったこともあった。 あの時はたまたま運が良く助かったものの、今度は何をされるか分かったものではない。 あの時のことを思い出し、寧々は緊張と恐怖で手に力が入り、足は少し震える。 そんな寧々を知ってか知らずか、目の前のつかさはニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべる。 「ねーねー、こんなところで何してるの?一人?普とは今日は一緒じゃないんだね」 そう言いながら、つかさは一歩。 また一歩と寧々との距離を詰めてくる。 寧々もそれに合わすように後退りするが、それもすぐに後ろの机に阻まれてしまう。 そうしてとうとうつかさと寧々の距離はすぐそばまで縮まる。 「な、何?何の用?」 どうにか絞り出した寧々の声は細く、震えていて、とても情けないものだった。 そんな寧々につかさは「用?」と首をコテンと可愛らしく傾げる。 「用がないとダメなの?」 「………そ、そういうわけじゃないけど……」 寧々はその返答に困惑する。 相手の目的が分からないとなると、ますます恐怖が膨れ上がる。 そうしているうちに、つかさは黒い瞳を細め、寧々にスッと手を伸ばそうとする。 「…っや!」 寧々は思わず持っていた鞄をつかさに向かって投げる。 だがそんなものは大した攻撃にはならず、鞄は当たったものの、つかさ自身は平気そうで、寧々の鞄だけが反動で床に無残に落ちる。 しかも、寧々は慌てていてちゃんとチャックを閉め忘れていたのだろう。 落ちた時に、鞄の中身が少し外に出てしまった。 寧々が、あっ…と思ってる間に、つかさがそれに気付いて拾い上げる。 「なにこれ?」 「ちょ、ちょっと……!」 「なんか挟まってる」 寧々が挟んだおいた栞だ。 さっきのシーンで寧々は栞を挟んだままだった。 ますますまずい…!と思う。 だが、寧々の思い虚しく、つかさはその栞の挟まったページをペラペラ読み進める。 「『そして二人の影は一つに………』って、これってチューしてるってこと?チュー??」 「うっ…!」 つかさの無邪気な質問に寧々は言葉に詰まる。 好きなシーンではあるが、こういう風に突っ込まれると、なぜか恥ずかしくなる。 寧々は「そ、そうだけど…」とモニョモニョと小さな声で答える。 「ふーん、この二人チューしてるんだー!」 そう言って、キャッキャッと楽しそうに笑うつかさの姿に、寧々はなんだか拍子抜けな気持ちになる。 つかさというこの男の子は、いつもこうだ。 怖い雰囲気を纏っていたかと思えば、こういう年相応な男の子の反応したりして、緊張してる自分が馬鹿みたいに思えてくる。 だが、そこがますますこの男の子が何を考えているのか分からなくて怖いところでもある。 そんなことを考えていると、つかさは「はい!」と落ちていた物ごと、本も鞄に入れて寧々に手渡してくれた。 「あ、ありがとう……」 「ん、いーよ!」 恐る恐る寧々はその差し出された鞄の持ち手を握り、つかさから受け取ろうと…… ギュッ 「えっ」 受け取ろうとした時、その手首をつかさのもう一つの手に握られ、グイッと引っ張られる。 かと思ったらもう目の前には、つかさのあの引き込まれそうな真っ黒い瞳があった。 「つーかまえた」 語尾にハートマークが付きそうなくらいの口調で、つかさはニヤリと笑う。 寧々はヒッと息をのんで、慌てて距離を離そうとするが、掴まれた手首がものすごい力で握られていて振りほどけない。 それどころか、ますますつかさの手に力が込められていく。 「いたっ!痛いっ、離して…!」 寧々が痛みに表情を歪めても、つかさは笑みを深くするだけで、離そうとも、力を弱めようともしない。 「もう普とはチューした?」 「な、何言って……」 「した?」 「っい…!し、してない!してないから!!」 「そっかー、まだしてないんだ!」 前にも似たような質問をされたとこがある。 一体この質問に何の意味があるのか分からないが、つかさはニコニコと満足気に笑う。 そうして、グッと鼻と鼻がくっつきそうなほど、顔を近寄らせ、あの真っ暗な闇のような瞳が寧々の瞳をとらえる。 「じゃあ、俺とする?」 「へ……」 投げかけられたその言葉が耳から頭に到達する前に、寧々の目いっぱいにつかさの顔。 唇の端に何かが触れたような感触がした。 「あ、外しちゃったや」 感触が離れた時、そんな場違いなほど明るい声が誰もいない教室に響く。 そうして、やっと頭が理解に追いつく。 そんな寧々に、つかさは黒い瞳を愉快そうに歪める。 「どーだった?外しちゃったけど、あの小説みたいだったよね?」 「小、説………」 放課後。 確かに今の現状は、だいぶ異なってはいるが、あの小説のワンシーンを再現したようだった。 そこで、スッと頭に思い浮かぶある人物。 「ねーねー、どうだった?口ではないけど、レモン味だ……」 なかなか返答をしない寧々につかさは顔を覗き込みながら問いかけようとしたが、その声は途中で途切れた。 「……っ……、」 寧々の紅玉色の瞳がゆらゆらと揺れ、静かに目元から涙が零れおちる。 「な、んで………」 寧々は咄嗟に涙を止めようと片手でゴシゴシと拭うが、一向に涙は止まらない。 それどころかさっきよりも涙が溢れ出てくる。 そんな寧々の姿に、つかさはキョトンとした表情をして、スッと掴んでいた手を離した。 そうして、今度は寧々の頬に手を伸ばす。 ビクッと震える寧々だが、つかさはそんな寧々の涙に濡れる目元を親指で拭うようになぞる。 そうして、ニッと口元を歪ませる。 「かーわいい」 ウットリするように、そして悪びれた様子のないその言葉に。 寧々の頭の中で何かがプツン、と音を立てて切れた。 寧々が片手を振り上げ、目の前のつかさめがけて思いっきり頬を引っ叩いたのだ。 叩かれたつかさは、思ってもいなかったのか、叩かれた頬を片手で抑えながら、呆然とする。 そんなつかさに、寧々は涙を零しながら、キュッと口を閉じ、やっと解放された手で床に落ちたままだった鞄を拾う。 そうしてつかさから背を向け、逃げるように教室を出て行った。 そうして、ガラッと大きな音をたてて女子トイレのドアが開いた。 そこには、まだかまだかと待っていた少女の姿。 「あ〜、やっと来た!遅いよ、ヤシ……」 ロ…と続けようとした花子くんの言葉は、その少女…寧々の異様な雰囲気を感じ取り、口の奥へと飲み込まれた。 「うっ、……ううっ……」 眉根は下がり、目からは涙がボロボロと溢れ出ていて、あからさまにいつもの寧々の様子とは違うとわかる。 寧々はその場で蹲り、顔を膝の間に埋めて嗚咽を漏らす。 「や、ヤシロ!?どうしたの?何かあった?どこか痛いの?」 慌てて近寄ってそう尋ねる花子くんに寧々は首を横に振る。 知られたくない、寧々は心の底から思った。 あの時。 つかさにキスされた後。 寧々の頭の中に浮かんだのは紛れもなく花子くんだった。 『ヤシロ……』 優しく笑み、名前を呼んでくれる花子くん。 その表情が頭に浮かんできた瞬間、寧々の 視界は歪み、気付けば次から次へと涙が零れ出ていた。 つかさにキスされたから、無理やりだったから、怖かったから……いろいろ理由はあるのかもしれない。 けど、それだけじゃない。 何故かとてつとなく悲しかった。 同じ顔だけど、全然違う。 そんな人に未遂だったとはいえ、そんなことをされたのがとてつもなく悲しくて、そして腹が立った。 「ヤシロ」 頭上から自分の名前を呼ぶ声がした。 そして、次の瞬間にはフワッと身体を包み込まれる感覚。 「……何があったのかは分からないけど、大丈夫だから。 もう俺がいるから、そんな泣かないで」 花子くんは優しい声色で、落ち着かせるように耳元で囁く。 寧々はその優しさに、さっきの悲しみが溶けていくような感覚がした。 「うん…… ありがとう、花子くん」 寧々は涙をこぼしながら、その優しさに甘えるように、ギュッと花子くんを抱きしめ返した。 「そーお?」 「そうよ。 さっきまで姿が見えないと思ったらいきなり現れて……それにその頬どうしたの?すごく腫れてるようだけど」 抱きしめてくるつかさを振りほどき、サクラはつかさの頬を指摘する。 さっきから気になっていたのだ。 するとつかさはなんでもないように「あー、これね」と笑う。 「ヤシロに叩かれたんだー!」 「ヤシロさんに?……何かしたの?」 「うん、キスした。 外しちゃったけど」 それを聞いて、サクラは一瞬固まるがすぐに、はぁ…と大きなため息をつく。 「何やってるの、貴方は……」 「えへへ、すごく痛かった」 「でしょうね。 ……でも、その割には嬉しそうだけど」 「うん!ヤシロ可愛かったからね!」 つかさは言いながらさっきの寧々の表情を思い出し、ニッと口元を歪める。 「普と遊ぶのも楽しいけど、ヤシロと遊ぶのも楽しかったー!」 「……あんまりヤシロさんをいじめちゃダメよ」 「あ、サクラ妬いてるの?サクラも俺とキスする?」 「妬いてないし、しない」 サクラの返答につかさは「ちぇー」と不貞腐れながら頭では、寧々と普のことを浮かべていた。 またヤシロに会いたいな……今度は普と一緒に、ね つかさはクスクスとその時のことを考えて、嬉しそうに笑うのだった。

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